2023.09.22

思考という道具を使い倒す。
「大学講師」と両輪でブランディングを追求

思考という道具を使い倒す。
「大学講師」と両輪でブランディングを追求

ビジネスのクリエイティブを行うdofでは、社員の社外での活躍も積極的に応援しています。今回のdof talkでは、dofの執行役員でブランディング・ディレクター、クリエイティブ・ストラテジストであり、多摩美術大学の非常勤講師としての一面も持つ工藤拓真の活動をご紹介します。
dofでグローバル企業のブランド開発や老舗企業の事業再生戦略、官民協同の街づくり事業、スタートアップ上場前後のクリエイティブ支援などの実務をこなす工藤は、アカデミックな場で学生に何を語り、何を実務に還元しているのか、語ってもらいました。

ビジネスのクリエイティブを行うdofでは、社員の社外での活躍も積極的に応援しています。今回のdof talkでは、dofの執行役員でブランディング・ディレクター、クリエイティブ・ストラテジストであり、多摩美術大学の非常勤講師としての一面も持つ工藤拓真の活動をご紹介します。
dofでグローバル企業のブランド開発や老舗企業の事業再生戦略、官民協同の街づくり事業、スタートアップ上場前後のクリエイティブ支援などの実務をこなす工藤は、アカデミックな場で学生に何を語り、何を実務に還元しているのか、語ってもらいました。

脱・シンプルな
「コミュニケーションデザイン論」

脱・シンプルな
「コミュニケーションデザイン論」

――大学ではどんなことを教えているのですか?

現在は多摩美術大学美術学部統合デザイン学科の非常勤講師をしています。今年で3年目になりました。学科長が日本を代表するプロダクトデザイナーである深澤直人さんということもあって、商業クリエイティブに関わる人が多い学科です。
講義としては、「コミュニケーションデザイン」というタイトルの年間講義を担当しています。業界的に馴染みやすいキーワードではあるものの、実は立ち止まって考えると、結構厄介なタイトル名なんです。だって、コミュニケーションも、デザインも、非常に広義で、複雑な意味合いを帯びた言葉だから。
シンプルにバシッと、「コミュニケーションデザインとは?」を定義づけて語るのは簡単ですが、それだと味気ない。それならビジネス書一冊読んで終わりでいい。そうではなくて、シンプルに片付けられない、コミュニケーションデザインの深みとか難しさとか、面白みとか。そういうことを届けたいと思って講義しています。幸い、90分×30回という途方もない長時間が使えるというのが大学講義の醍醐味です(と同時に苦しさでもあるのですが…)。
毎回の講義の中で「あーでもないこーでもない」と、悪戦苦闘しながら、コミュニケーションデザインについて、優秀で面白い学生の皆様と一緒に考えています。

例えば建築物があることで人の流れがどう変わるかを意図して設計することもコミュニケーションデザインのひとつ。なので、「公園をつくる」ことと「ポスターをつくる」ことには、共通点もある。もっといえば、政治経済も、法律だって、コミュニケーションデザインのひとつといえるはず。僕自身は、美大出身ではなく、法学部の出身。そして今では大企業やスタートアップの経営のお手伝いをしている。そんな自分だから提供できる話題もあると思って、積極的に、広告やデザインの世界とは違う世界の視点を持ち込むようにしています。

――大学で講師を務めることになったきっかけは何だったのでしょうか。

電通でクリエイティブやストラテジーの社内研修をやっていたことと、その後、NewsPicksなどの場で、社会人向けにアイデア研修などを実施していたことから、別の大学から声がかかったことがキッカケです。大学教育に携わるようになって7年目になります。マーケティングからブランディング、クリエイティブ、クリティカルシンキングなどなど。講義名こそ変われど、講師として社会人に向けてお話していた内容と、大学生向けにお話していることとの根幹は基本的に変わりません。

元々教えることに興味があったわけではないです。ただ、高校時代、「学者になりたい!」なんて夢見ていたこともありまして、ずっとアカデミックの世界には興味がありました。その影響もあって、電通入社時も希望部署は電通総研だったくらいです。講師をすることで、研究職の方との交流や、自分自身も研究にかかわるキッカケを得られる。そんな場がつくれるということも、大学の魅力です。

――大学ではどんなことを教えているのですか?

現在は多摩美術大学美術学部統合デザイン学科の非常勤講師をしています。今年で3年目になりました。学科長が日本を代表するプロダクトデザイナーである深澤直人さんということもあって、商業クリエイティブに関わる人が多い学科です。
講義としては、「コミュニケーションデザイン」というタイトルの年間講義を担当しています。業界的に馴染みやすいキーワードではあるものの、実は立ち止まって考えると、結構厄介なタイトル名なんです。だって、コミュニケーションも、デザインも、非常に広義で、複雑な意味合いを帯びた言葉だから。
シンプルにバシッと、「コミュニケーションデザインとは?」を定義づけて語るのは簡単ですが、それだと味気ない。それならビジネス書一冊読んで終わりでいい。そうではなくて、シンプルに片付けられない、コミュニケーションデザインの深みとか難しさとか、面白みとか。そういうことを届けたいと思って講義しています。幸い、90分×30回という途方もない長時間が使えるというのが大学講義の醍醐味です(と同時に苦しさでもあるのですが…)。
毎回の講義の中で「あーでもないこーでもない」と、悪戦苦闘しながら、コミュニケーションデザインについて、優秀で面白い学生の皆様と一緒に考えています。

例えば建築物があることで人の流れがどう変わるかを意図して設計することもコミュニケーションデザインのひとつ。なので、「公園をつくる」ことと「ポスターをつくる」ことには、共通点もある。もっといえば、政治経済も、法律だって、コミュニケーションデザインのひとつといえるはず。僕自身は、美大出身ではなく、法学部の出身。そして今では大企業やスタートアップの経営のお手伝いをしている。そんな自分だから提供できる話題もあると思って、積極的に、広告やデザインの世界とは違う世界の視点を持ち込むようにしています。

――大学で講師を務めることになったきっかけは何だったのでしょうか。

電通でクリエイティブやストラテジーの社内研修をやっていたことと、その後、NewsPicksなどの場で、社会人向けにアイデア研修などを実施していたことから、別の大学から声がかかったことがキッカケです。大学教育に携わるようになって7年目になります。マーケティングからブランディング、クリエイティブ、クリティカルシンキングなどなど。講義名こそ変われど、講師として社会人に向けてお話していた内容と、大学生向けにお話していることとの根幹は基本的に変わりません。

元々教えることに興味があったわけではないです。ただ、高校時代、「学者になりたい!」なんて夢見ていたこともありまして、ずっとアカデミックの世界には興味がありました。その影響もあって、電通入社時も希望部署は電通総研だったくらいです。講師をすることで、研究職の方との交流や、自分自身も研究にかかわるキッカケを得られる。そんな場がつくれるということも、大学の魅力です。

「思考という道具」を、使い倒す

「思考という道具」を、使い倒す

――講義でどんなことを大事にしていますか。

「面白いに逃げない」ことです。ふつう、講義なんて面白ければ面白いほどいい!って話だと思われていると思うんですが、僕はそうは思っていません。講義に限らず、実技科目にとって「面白い」は、諸刃の剣。面白ければ面白いほど、その時その瞬間の時間は充実する、アドレナリンもでる。だけれども、いくら面白くっても、自分自身に技術が身につくとは限らない。
自転車でも何でもそうですが、自分が身体を動かしてみないと、身につくものも身につかない。いくら教科書をよんだって、何度も転ばないと、自転車に乗れるようにはならない。
でも、大学講師をやっていると、つい学生さんの顔色を伺って、面白いほう、面白いほうへ逃げて言ってしまう。毎回毎回新しい刺激を求めて、業界の裏話を聞かせたり関係者を連れてきたりすると盛り上がるけれど、それだけです。自分は講義をできるだけ実践に近づけたいと思っていて、同じ事をひたすら繰り返すような退屈な時間も大事にしています。
広告業界で天才と呼べるような超人に、何人も出会ってきました。でも、そんなの全体数からすると、ほんの一握り。私自身ふくめて、多くの人は、「凡人として、いかに天才の寝首をかくか」真剣に考えるべきだと思っています。それには、守破離という教えが教えてくれる通り、思考の道具=型をひたすら使い倒すしか無いと思っています。3Cや4Pといった超ベーシックなフレームワークも、とにかく使い倒すことでわかってくるものがあるんです。だからいかに辛抱強く、思考し続けることの必要性を届けられるか。講義内容はシンプルで、同じ事をひたすら繰り返し問い続けるので退屈かもしれませんが、再現性を持ってあらゆる問題に使える道具になるまで身につくように伝え続けています。90分の授業を年間30回、受講生は200人なので、人生のかなりの時間をもらっていることになりますから、とにかく汎用性高く使えるようになってほしい。実際、学生の反応も評価もとてもいいんですよ。

――講義でどんなことを大事にしていますか。

「面白いに逃げない」ことです。ふつう、講義なんて面白ければ面白いほどいい!って話だと思われていると思うんですが、僕はそうは思っていません。講義に限らず、実技科目にとって「面白い」は、諸刃の剣。面白ければ面白いほど、その時その瞬間の時間は充実する、アドレナリンもでる。だけれども、いくら面白くっても、自分自身に技術が身につくとは限らない。
自転車でも何でもそうですが、自分が身体を動かしてみないと、身につくものも身につかない。いくら教科書をよんだって、何度も転ばないと、自転車に乗れるようにはならない。
でも、大学講師をやっていると、つい学生さんの顔色を伺って、面白いほう、面白いほうへ逃げて言ってしまう。毎回毎回新しい刺激を求めて、業界の裏話を聞かせたり関係者を連れてきたりすると盛り上がるけれど、それだけです。自分は講義をできるだけ実践に近づけたいと思っていて、同じ事をひたすら繰り返すような退屈な時間も大事にしています。
広告業界で天才と呼べるような超人に、何人も出会ってきました。でも、そんなの全体数からすると、ほんの一握り。私自身ふくめて、多くの人は、「凡人として、いかに天才の寝首をかくか」真剣に考えるべきだと思っています。それには、守破離という教えが教えてくれる通り、思考の道具=型をひたすら使い倒すしか無いと思っています。3Cや4Pといった超ベーシックなフレームワークも、とにかく使い倒すことでわかってくるものがあるんです。だからいかに辛抱強く、思考し続けることの必要性を届けられるか。講義内容はシンプルで、同じ事をひたすら繰り返し問い続けるので退屈かもしれませんが、再現性を持ってあらゆる問題に使える道具になるまで身につくように伝え続けています。90分の授業を年間30回、受講生は200人なので、人生のかなりの時間をもらっていることになりますから、とにかく汎用性高く使えるようになってほしい。実際、学生の反応も評価もとてもいいんですよ。

――大学講師としての活動がdofの仕事に活きていると感じることは

実は90分の授業をするために、毎授業ミニブックをつくるぐらいのインプットと準備をしています。建築や政治などいろいろな分野を扱うがゆえに、プロフェッショナルじゃないことも扱うことになります。取り上げる以上は考えなければならないので、学生に伝わるようにメソッドを整理していくうちに、考える引き出しは増えました。
普通の仕事はインプットを受けてアウトプットしますよね。例えばオリエンがあって、こんな情報があってこれぐらいの予算で…といったインプットを受けて、広告などのアウトプットをつくりますが、講師の仕事ではdofの仕事のアウトプットがインプットにもなる。例えばdofの仕事で得られた「施設をつくることがコミュニケーションにもなるんだ」といった気づきがインプットになって、またコミュニケーションデザインへの理解が深まったりすることもあります。そうしたインプットとアウトプットがうまく循環していく感じが相互に活かされていると感じています。
それから、毎回200人の学生相手にプレゼンしているようなものなので、プレゼンスキルは当然上がります。200人いたら200人前提知識もモチベーションも全然違うので、どこに焦点を合わせて伝えればいいのか、感じ取れる嗅覚は磨かれている感覚があります。

――大学講師としての活動がdofの仕事に活きていると感じることは

実は90分の授業をするために、毎授業ミニブックをつくるぐらいのインプットと準備をしています。建築や政治などいろいろな分野を扱うがゆえに、プロフェッショナルじゃないことも扱うことになります。取り上げる以上は考えなければならないので、学生に伝わるようにメソッドを整理していくうちに、考える引き出しは増えました。
普通の仕事はインプットを受けてアウトプットしますよね。例えばオリエンがあって、こんな情報があってこれぐらいの予算で…といったインプットを受けて、広告などのアウトプットをつくりますが、講師の仕事ではdofの仕事のアウトプットがインプットにもなる。例えばdofの仕事で得られた「施設をつくることがコミュニケーションにもなるんだ」といった気づきがインプットになって、またコミュニケーションデザインへの理解が深まったりすることもあります。そうしたインプットとアウトプットがうまく循環していく感じが相互に活かされていると感じています。
それから、毎回200人の学生相手にプレゼンしているようなものなので、プレゼンスキルは当然上がります。200人いたら200人前提知識もモチベーションも全然違うので、どこに焦点を合わせて伝えればいいのか、感じ取れる嗅覚は磨かれている感覚があります。

成功の確度を上げるヒントを、
「ブランディング」の周りで見つけたい

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「ブランディング」の周りで見つけたい

――dofのメンバーであり、大学講師でもある「工藤拓真」として今後目指したいものや野望は?

dofで「ブランディング・ディレクター」という肩書きを名乗っていますが、ブランディングって、本当に厄介な概念で。広告もそうだし、建物もそうだし、まちづくりだってそうかも知れない。本当はもっといろんなことができる概念なのに、今言われているブランディングは狭いなと感じています。ブランディングの概念というと「かっこいい」「大事にする」「愛される」みたいな、広告業界の中でもトップクラスのふわっとした抽象的な言葉です。だからこそ、「ブランディングって何?」をもっと踏み込んで考えていきたいと思っています。そうする中で、例えばサントリーさんと一緒に取り組んできたハイボール、「GO」さんと一緒に取り組んでいる移動革命のように、いろんな仕事で、「文化をつくる」成功確率を高めていきたい。
単に売れるプロモーションやマーケティングというだけじゃなくて、ちゃんと定着して景色が変わったなということに寄与できるヒントを、ブランディングという言葉の周りに見つけたい。アカデミックな研究も織り交ぜながら、講師と実務の両輪を回していく中で見つけられたらいいなと思っています。

――dofのメンバーであり、大学講師でもある「工藤拓真」として今後目指したいものや野望は?

dofで「ブランディング・ディレクター」という肩書きを名乗っていますが、ブランディングって、本当に厄介な概念で。広告もそうだし、建物もそうだし、まちづくりだってそうかも知れない。本当はもっといろんなことができる概念なのに、今言われているブランディングは狭いなと感じています。ブランディングの概念というと「かっこいい」「大事にする」「愛される」みたいな、広告業界の中でもトップクラスのふわっとした抽象的な言葉です。だからこそ、「ブランディングって何?」をもっと踏み込んで考えていきたいと思っています。そうする中で、例えばサントリーさんと一緒に取り組んできたハイボール、「GO」さんと一緒に取り組んでいる移動革命のように、いろんな仕事で、「文化をつくる」成功確率を高めていきたい。
単に売れるプロモーションやマーケティングというだけじゃなくて、ちゃんと定着して景色が変わったなということに寄与できるヒントを、ブランディングという言葉の周りに見つけたい。アカデミックな研究も織り交ぜながら、講師と実務の両輪を回していく中で見つけられたらいいなと思っています。

● 取材:野崎 愉宇(dof)
● 構成・文:中原 絵里子
● 撮影:内山田 のぞみ(dof)

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