2023.12.25

クリエイティブとビジネスをつなぐ存在。
クリエイターが語るdofの役割

クリエイティブとビジネスをつなぐ存在。
クリエイターが語るdofの役割

第一線で活躍するプロフェッショナルと共に、クライアントの課題解決とビジネスのクリエイティブに取り組むdof。その存在はパートナーの目にどう映っているのでしょうか。今回のdoftalkでは、それぞれ電通のDNAを引き継ぎながら独立し、直近では「天野エンザイム」プロジェクトなどでタッグを組んだ、株式会社Hotchikiss代表でアートディレクターの水口克夫さん、クリエイティブ・ディレクター・コレクティブ(つづく)の設立メンバーでクリエイティブディレクター/コピーライターの細川美和子さんに、dof代表の齋藤太郎が業界でもちょっと独特・ユニークなdofの果たす役割や仕事への姿勢についてお聞きしました。

第一線で活躍するプロフェッショナルと共に、クライアントの課題解決とビジネスのクリエイティブに取り組むdof。その存在はパートナーの目にどう映っているのでしょうか。今回のdoftalkでは、それぞれ電通のDNAを引き継ぎながら独立し、直近では「天野エンザイム」プロジェクトなどでタッグを組んだ、株式会社Hotchikiss代表でアートディレクターの水口克夫さん、クリエイティブ・ディレクター・コレクティブ(つづく)の設立メンバーでクリエイティブディレクター/コピーライターの細川美和子さんに、dof代表の齋藤太郎が業界でもちょっと独特・ユニークなdofの果たす役割や仕事への姿勢についてお聞きしました。

常識を疑い一歩外から物事を見て、
新しい視点を提示する

常識を疑い一歩外から物事を見て、
新しい視点を提示する

▲ 日本の最高級ウイスキーとして名高いサントリー「響」。 その矜持とブランド世界を伝えるため、世界でも評価が高い伊藤若冲の作品をモチーフにした広告を水口さんと一緒に展開しました。

▲ 日本の最高級ウイスキーとして名高いサントリー「響」。 その矜持とブランド世界を伝えるため、世界でも評価が高い伊藤若冲の作品をモチーフにした広告を水口さんと一緒に展開しました。

――みなさん電通のご出身ですが、当時から接点はあったのですか?

―齋藤:
僕は実は電通に入社してから30歳ぐらいまではクリエイティブの仕事をしていなくて、ずっとメディアの仕事だったんです。営業に異動になってから、クリエイティブをやりたいと言い続けて、やっと初めて参加させてもらえた資生堂さんの仕事で、アートディレクターが水口さん、クリエイティブディレクターが大島さんというドリームチームでした。

―水口さん:
当時から物怖じせずに言いたいことを言うし、企画の別案は持ってくるしと、食らいついてくる感じはあった。ちょっと土足で上がってくる感じはあるんだけれど(笑)、違う視点を持ってきてくれるのはありがたいと感じていましたね。資生堂さんの仕事は3、4年続きましたが、最初から最後まで太郎さんの印象は変わりませんでしたね。
大島さんには電通時代から「大島組」のメンバーとして本当にいろいろ教えていただきました。独立後も、dofとサントリーさんの「響」やJR東日本の北陸新幹線などの仕事をご一緒したりしました。

▲ フィラディス”Because,”。「知れば知るほど、ワインはおいしい。」というブランドコンセプトからネーミング、デザインまでを細川さんと、齋藤が共同代表を務めるCC Inc.とともに開発。ワインについて楽しく学べる"ビコーズ,ワインの学校"も展開。https://school.because-wine.com 

▲ フィラディス”Because,”。「知れば知るほど、ワインはおいしい。」というブランドコンセプトからネーミング、デザインまでを細川さんと、齋藤が共同代表を務めるCC Inc.とともに開発。ワインについて楽しく学べる"ビコーズ,ワインの学校"も展開。https://school.because-wine.com

―細川さん:
私は2001年入社で、電通時代の太郎さんとは3,4年しか被っていないんです。最初に太郎さんとお仕事をしたのは、フィラディスさんが”Because,”というワインブランドを立ち上げる時で、私が「発酵に興味がある」という話をしたのがきっかけで、酵素の事業を展開する、天野エンザイムさんのお仕事に誘ってくださったんですよね。

――お二人が仕事をするうえで大事にしていることはどんなことがありますか?

―水口さん:
今、京都芸術大学の通信制大学院でコミュニケーションデザインを教えているんですが、デザインに関係ない仕事をしている人にどんなヒントの出し方をするとわかってもらえるのか、を考えるいい機会になっています。クライアントはクリエイティブがわかっている人ばかりではないので、どういう補助線をつければ伝わるかという「ヒントの出し方の引き出し」をたくさん持っていることが仕事でも大事なのだとつくづく思います。

―齋藤:人によってデザインへの理解や経験値も違うから、響くスピードやタイミングも違いますよね。相手を見ながらコミュニケーションの仕方を変えていくことも大事ですよね。

―細川さん:私は大学で文化人類学を学んでいたのですが、「自分達の文化を外から見えることで、常識や思い込みを疑い、発見する姿勢」は広告と共通していると思っています。周りを見ると、いろいろな視座を持っている人がいい広告をつくっているとも感じるので、自分も常に新しい視点を身につけていかなければと思っています。

経営の視点とクリエイティブの両輪で
イシューに取り組む

経営の視点とクリエイティブの両輪で
イシューに取り組む

――お二人から見てdofは、どんな会社だと感じますか?

―細川さん:
クリエイティブと経営の両方を理解してつなげてくれる存在です。dofさんのように経営者と同じ視座で話ができて、商品やサービスが生まれる前の段階から関われるような存在と、クリエイティブが一緒になると強いですよね。プロデューサーとして、そういった活動が得意な方がもっと育てば、もっと活躍できるクリエイターもたくさんいると感じますし、dofさんがそういう人を増やそうとしてくれているのはすごくありがたいと思っています。そんなこともあって、昨年入社した宇佐見さんを紹介しました。彼がクライアント側の時に知り合ったのですが、広告業界への転職を希望されていて、表現への理解度や解像度が高く、かつCFOとして働いていて経営にも強い人だから、直感的にdofさんに合いそうだと感じて。

――ご紹介いただいた時にどのように思われましたか?

―齋藤:
細川さんのような審美眼のある人からの紹介なので、これはすぐに会わなきゃと思いました。うちは経営とクリエイティブの両方に興味がある人でないと難しいんです。クリエイティブへのリスペクトや好奇心がないと厳しいし、経営の視点も必要。オリエンを鵜呑みにせず、経営者と同じ視座で考える姿勢が求められますから。

―水口さん:
太郎さんが大島さんと二人で会社を立ち上げた頃は、もがきながらもすごいスピードで必死に走っている印象だったけれど、今は前を歩いてみたり、後ろから押してみたりと、dofという会社の動き方や人の育て方が見えてきたのかなと感じます。時々土足なのは相変わらずだけど(笑)

―齋藤:
ねらってわざとやってるんですよ(笑) チームもクライアントも、運命共同体として同じイシューに取り組んでいくという意識が大事で、そうでないといいものはつくれません。だからなるべく垣根をつくらないようにというのは意識しています。それは社員に対しても同じですね。
人はそれぞれいろんな想いや正義を持っていて、正解はない。だから、それをきちんと受け止めるプロセスは絶対必要だと思います。一人ひとりの声を聴いて受け止めたうえで、納得感を持って答えを出す。その結果チームが同じ方向を向いていくっていうことはすごく大事にしています。対峙してしまったらうまくいかない。

――ー水口さん、細川さんは、どんな意見でもいつも一度全部受け止めてくださいます。同じく「聴く」ことを重視しているのでしょうか。

―細川さん:
そうですね、細かい悩みや考えていることは全部教えてほしいですし、なぜそう思うのか理由も聞かせてほしいと思っています。いろんな役割の人がいてそれぞれの視座があるし、意外なところからヒントが見つかることもあるので、コピーをつくるうえでも聴くことは大事だと思います。

―水口さん:
ジグソーパズルがバシッとはまって完成できるとすごく気持ちいい。でもピースが見つからないせいで完成できないと気持ち悪い。だから隠してないで全部ピースを出してよと思いますし、その方が楽しんで仕事ができますね。

―齋藤:
コピーライターもアートディレクターも、「聴く」仕事なんだと思います。社会の声を聴いて、課題を聴いて、経営者の思いを聴いて合意形成していくという。現場のメンバーの中には「正しいかもしれないけれど、そうは言っても」という想いもあるかもしれないから、それを聴く役割もまた必要なのだと思います。

▲ 天野エンザイムさんと酵素の啓蒙活動の一環として作ったWEBサイト『見えないもので世界はできている』mienaimono.jp

▲ 福井県 金津創作の森美術館で開催された展覧会"Fermentation Tourism Hokuriku ~ 発酵から辿る北陸、海の道"にて酵素コーナーを展開。

――お二人とdofでタッグを組んだ天野エンザイムさんのプロジェクトは、明確なオリエンがないところから始まったと聞きました。どのように進めていったのでしょうか。

―細川さん:
天野エンザイムさんという国内トップの酵素カンパニーであり、BtoBで、グローバルでも成長を続けている会社のブランディングとしてどんなアプローチがいいのか、まずは社長をはじめとする社員の方々の話を聴くところから始めました。そのお話がとても面白くて、環境に負荷をかけない酵素の力が食糧だけではなく、エネルギー問題や環境問題など、様々な社会課題の解決に役立つ可能性を秘めた存在なんだということを知るにつれて、世の中に向けて、そのことを伝えるのがいいんじゃないかという結論になりました。太郎さんやdofのプロデューサーのみなさんが、私たちが酵素に対する考えをアップデートできるまで、何度も取材やインタビューの場を設けてくれましたよね。

―水口さん:
そういう議論を通して「見えないもので世界はできている」というワードが出てきて。自分はデザイナーなので、その「見えないもの」をどう可視化するかが仕事です。最初酵素をキャラクタライズする案も出たのですが、研究所の方々にインタビューを重ねても細菌などと違って酵素はキャラクター化が難しいことに気づいたんです。でも話を聞いていくうちに、酵素は「秩序のある世界」なんだということが理解できてからは、それを一般の方々にどう楽しんでもらえるかを考えることに集中できました。

―細川さん:
「見えないもので世界はできている」というのは、酵素そのものが見えないってだけじゃなくて、それによって社会課題を解決できるかもしれないという希望もそうだし、酵素を昔から活かしてきた人々の、自然の摂理そのものに対するリスペクトも「見えないもの」なんですよね。大切なものって実は目に見えない。そういう視座を大事にしながら育てていこう、と呼びかけるプロジェクトです。酵素とその可能性について幅広い視点で学べるサイトづくりや、北陸の美術館での展覧会などを実践しています。

―齋藤:
今の姿とあるべき姿をつないでいくのが自分達の仕事ですからね。そのために何を使ってどんな風に、というところでお二人の力をお借りしながら形にできたのかなと思います。

社会の秩序を再構築できるのが
コミュニケーションの力

社会の秩序を再構築できるのが
コミュニケーションの力

――今後どのようなクリエイティブに取り組みたいと思われますか?

―水口さん:
やっぱり川上からつくっていく仕事をやりたいですね。幸いにしてデザインは「どう伝えるか」の前に「どう形をつくるか」という部分に携われますから、「この商品が社会とどう関わっていくのか」という視点でコミュニケーションをつくっていく、ということをトータルでやっていきたいと思っています。
今私が大事にしているコンセプトは「秩序」です。人は秩序正しい状態になっていることに安心感を覚えるもの。現状世の中から秩序がどんどんなくなりつつある中で、もう一度ちゃんと秩序正しい状態をつくれるようにしてあげられるのは、もしかしたらコミュニケーションの力なのかもしれないなと感じています。

―細川さん:
地球に生きるすべての人がステークホルダー、と言える時代なので、どういうビジョン・ミッション・コンセプトを持って企業活動をやっていけばみんなが幸せになるのか、示すことが大切だと考えています。遠い未来まで含めた幸せのためにはどうあるべきなのか、答えを決めつけるのではなく、対話する場として、広告が活躍するといいなと思っています。そうやって、世の中といい関係を作りながら、これからの新しいまなざしが生まれたり、新しい常識に出会える場所になれるのが広告の魅力。引き続き、dofのみなさんの力を借りて経営者の方ともいい関係を作りながら、そのお手伝いができたらなと思います。

● 構成・文:中原 絵里子
● 取材:柴山 絵里子(dof)
● 撮影:宇佐見 彰太(dof)

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