東宝グループ新スローガン誕生秘話
言葉に込めた、社員ひとりひとりの想いとは

『国宝』『鬼滅の刃』そして『ゴジラ』。日本だけでなく、グローバルで快進撃を続ける東宝グループ。しかしその裏では、「東映?東宝?」、その違いの認識も、世の中ではまだはっきりとはしていない。
映画だけでなく、IPやアニメへの期待が高まる中で、歴史的にグループを支えてきた不動産事業の存在も含めて、「東宝らしさ」とは何かを再定義し、グローバルで戦う集団へと進化していく。そんな挑戦を、経営幹部だけでなく社員も巻き込みながら進めてきた「TOHO GROUP Branding Project」。
後半は、東宝株式会社 コーポレートコミュニケーション部企画室のみなさまをお招きし、dof担当チームと共に、どのような対話と試行錯誤を経てグループスローガンが産まれたのかを紐解いていただきます。

暗黙知化していた “東宝らしさ”

ー聞き手
「東宝らしさって何?」という疑問は、いつ頃生まれてきたのでしょうか
ー竹田さん
ちょうど1年前、経営陣と全従業員による対話型の会議(タウンホールミーティング)をはじめとする様々な横断プロジェクトに携わらせていただき、多くの社員の話を聞かせて頂く機会に恵まれました。そこで感じたのは、ベテランも若手も関係なく皆が「東宝らしさとは?どこを目指すべき?」と真剣に自問自答している姿でした。
東宝グループが大切にしている文化や思想は、少数精鋭組織の中で「暗黙知」として継承されていたんだと思います。これから「精鋭多数」を目指す中、この大切な「東宝らしさ」を誰もが共有できる言葉にして、現場で働くみんなの支えになるように届けたいなと。
ー小宮さん
それで、さまざまな企業のブランディングを手掛けられているdofさんにご相談することにしたんですよね。
ー石井
最初は正直、驚きました。外から見れば、東宝のみなさまは、常に自信満々で不安も迷いもなく働いているものだと想像していたので。でも同時に、「この迷いに応えて、『やっぱり東宝って素敵だ!』と思えるお手伝いができるなら、こんなにうれしいことはない」と感じました。すぐに「なんとかしたい!」という気持ちになりましたね。
ー竹田さん
あのとき、我々の課題を真正面から受け止めてくださった齋藤さん、石井さんの熱意と誠実さ、今でもはっきり覚えています。
100人インタビューから見えてきたもの

ー聞き手
具体的に、どのようにプロジェクトを進めていったのでしょうか
ー石井
最初に取り組んだのは、東宝の創業者である小林一三さんのことを深く知ることでした。本を読み漁る中で、小林一三さんの情熱に触れて「すごい人だな!」と感動して。
ー齋藤
その後、コピーライターの中村直史さん(五島列島なかむらただし社)も加わって、社員のみなさまにじっくりお話を聞くことになりました。
ー中村さん
確か、最初にボクが「何人でも聞き続けますよ」って言ったと思うんです。でも、まさか100人も聞くとは想像もしていなくて・・・。
ー小宮さん
こちらが100人に聞いて欲しいってお願いしたとき、石井さんが一瞬驚きつつも「100人聞けば100通りの素敵な話が聞けるのでやりましょう!」と前向きに応えてくださいましたね。
ー竹田さん
中村さんや石井さんがしてくださったインタビューは感動的でした。普段話している僕らだと見落としてしまうようなちょっとした感情の機微を察知して「それって、ひょっとしてこういう気持ちじゃないですか?」と核心をつく質問をしてくださる。そうすると、社員の方がハッとされるんです。

ー小宮さん
今回のインタビューを通じて、小林一三さんの「朗らかに、清く正しく美しく」という精神が、今なお多くの社員の根底に深く根付いていることを再発見しました。
ー石井
小林一三さんが大切にしている「健全性」や「大衆性」を、一人ひとりが真剣に考えている姿が、印象的でしたね。子どもから大人まで、みんなで見て笑顔になれるものを作りたい、という共通の願いがありました。
ー柴山
インタビューでたくさんの東宝の方々にお会いしましたが、本当に良い方ばかりで感激しました。
ー齋藤
あと、社員のみなさまは本当に東宝が好きですよね。「会社が好き」というより、「家が好き」みたいな感覚で。いわゆる愛社精神とは少し違って、家族愛に近い。エンタテインメント企業ならではの文化祭的な一体感を好む気質があるように感じました。
そして組織力が強い分、個人プレーや大胆なチャレンジには少し慎重になる傾向を感じました。チームで勝つことを大切にしている反面、突出したアイデアを前に出す場をどうつくるかは、これからの課題だと思います。東宝は外との接点が多いですし、社会に知られているからこそ、会社としての姿勢や価値観を示すことが、社員一人ひとりの覚悟にもつながるかもしれません。
ー中村さん
世の中の人たちが、東宝グループについて100受け取ったうちの、1つか2つしか頭に残らなくても、その1つか2つが、心を動かし人生に残ることがある。だから、会社として何を大切にしているかを外に示すことは、社員が胸を張って仕事に向き合うためにも大切なことだと思うんです。
「Moments for Life」言葉が産まれた瞬間

ー聞き手
新スローガンの策定で、どのようなことが大変でしたか
ー石井
たくさんの事業を展開する東宝グループの核心を一言で言い表すのはとても難しい作業でした。色々な事業を一言で包含する必要がある。ああでもないこうでもないって、たくさんの言葉を並べましたね。スタートアップなら新たにわかりやすい言葉を提示して引っ張っていくことができるかもしれませんが、東宝は歴史と成長性、その両方があるがゆえに難しい。
ー中村さん
小林一三さんをはじめ、東宝の礎を築いてこられた諸先輩方が聞いたとしても「うん、そうだね」って納得してくれて、なおかつ未来を担う人たちも真剣になれるような言葉。新しい挑戦を後押ししつつ、実は東宝の創業当時から変わらない「芯」をちゃんと表現できること。この両方を叶えている言葉にたどり着きたいと思いました。
ー村山さん
最初は、四つの方向性(心、人生、つながり、人間らしさ)で言葉を考えていたんですよね。どれも社員から出てきた言葉で、すべてが心に響くワードだったので、その中から一つに絞るときは胸が締め付けられるような思いで。「どれも良すぎて選べない!」って、うれしい悲鳴があがってました。

ー石井
社長・副社長と繰り返した「朝会」や、役員のみなさまが参加してくださった「常務会」「経営合宿」は、この言葉が産まれる上でとても大きな意味がありました。中期経営計画という、会社全体の大きなプロジェクトともしっかり結びつけて、社員のみなさまの声と、役員のみなさまの想いをひとつにしていきました。
ー中村さん
役員のみなさまが、普段なかなか口にしない「仕事への熱い想い」を真剣に語り合う姿は感動的でした。あの濃密な時間があったからこそ、この言葉に深い魂が宿ったのだと思います。東宝グループほどの大企業で、トップの方々が集まり、ここまで深く「アイデンティティ」について語り合う機会は、本当に珍しいことだと思います。覚悟と情熱がなければできないことでした。だから、「Moments for Life その時間が、人生の力になる。」という一文には、小林一三さんの「大衆のために」という精神から、人々の人生を豊かにしたいという大きくて深い願いまで、東宝グループのこれまでとこれからが詰まっていると思っています。
グループスローガンが描く、東宝グループの未来

ー聞き手
皆さんはこの言葉に、どのような未来を浮かべていますか
ー柴山
新スローガンがみなさまの〝自分たちの言葉〟になっていったらうれしいですね。プロジェクトを通して感じた、東宝のみなさまの仲間を思いやる温かい心が、この言葉を通じて、社内から世の中へ広がっていくことを夢見ています。
ー中村さん
NIKEのスローガン「Just Do It」がそうだったように、この言葉も、みなさまがこの言葉を胸に日々仕事に向き合う姿を通して、自然と東宝の合言葉になっていくはずです。「自分は何のために東宝で働いているんだろう?」と一人ひとりが考えることで、素晴らしい仕事が生まれ、その積み重ねが、この言葉をさらに輝かせてくれると思います。
ー竹田さん
みんながこの言葉を「口癖」のように使ってくれたらうれしいですね。真剣な場面でもいいし、飲みの場でもいい。みんなでこの言葉を育てていけたら素敵だと思います。

ー村山さん
今回、このスローガンをあしらったステッカーを作るなどして、みんながこの言葉を身近に感じてもらえる工夫をしています。いろんな場面で見て触れていくなかで、自然と心が温かくなって、「やっぱり東宝っていい会社だな」と感じてもらえたらうれしいです。そういえば、全社員集会後の懇親会で、会長が乾杯の音頭で「Moments for Life!」って、使ってくださってましたよね!
ー石井
めちゃくちゃうれしいです!この言葉を、日々のちょっとした判断のヒントにしていただけたらなと。「今、私がしていることは、誰かの人生の力になっているかな?」と。この言葉が形式的に名刺に入っているだけじゃなく、仕事の中で使い続けて頂ければ、きっと世の中にもっと素敵なものが届けられるんじゃないかなと思います。
東宝グループのみなさまが生み出しているものには、世界を温かくする力があると、私は信じています。日々の仕事の中で人間関係のすれ違いがあっても、東宝が届けるコンテンツを通じて、心が通じ合う瞬間はきっとある。みなさまが生み出す “Moments” が人と人とのつながりを深め、世界を少しでもやさしい場所にしてくれることを期待しています。
ー小宮さん
このスローガンは、「エンタテインメントが届ける、その先の本当の価値とは何か?」という、東宝グループなりの新しい答えだと思っています。日々の行動を導く羅針盤のように、この言葉が東宝の未来を照らしていくことを願いながら、大切に広めていきたいです。

ー齋藤
東宝にはいま、追い風が吹いていると思います。このチャンスをどう活かすか、どう見せていくかが大事。これからは戦う舞台も変わっていくでしょう。日本代表として、世界のエンタテインメント業界の中で、新スローガンとともに確固たるポジションを築いてほしいですね。
ー竹田さん
ありがとうございます。みんなの声から産まれた「Moments」には深い意味を感じます。鉄道から始まった小林一三さんの事業は、演劇、映画、不動産、アニメ、そして世界へと戦う舞台が広がりましたが、形は違っても、全てに共通するのが「時間」なのかもしれません。技術の進歩で人々の自由時間が増える今は、東宝ならではの「人生の力になる時間」をもっと世界へ届けるチャンスかもしれません。仲間と共にそんな時間を届け、私自身もその一瞬一瞬を大切に過ごしたいと思っています。
ー中村さん
このスローガンは、社員のみなさまの「声」が集まって産まれた言葉です。文字の裏にある思いや表情まで感じ取ってほしい。だからこそ、ときどき声に出して、自分の言葉として、そして仲間の言葉として大切にしてください。
ー竹田さん
今日、こうしてdofのみなさまと一緒にプロジェクトを振り返って、改めて「東宝」が好きになりました。この時間も、まさにMomentでした!dofさん、中村さんに本当に感謝です!

