移動に新しい選択肢を。
『GOエコノミー』誕生の舞台裏。

TOPIC

赤の他人同士が、1台のタクシーにおトクに相乗りする。そんな新しい移動の選択肢をつくるべく生まれたタクシーアプリ『GO』の新サービス『GOエコノミー』。GOエコノミーを新常識として世に広めるために。dofではブランド開発からTVCM・WEB・OOHの広告キャンペーンまで伴走しました。

今回はGO株式会社で新規事業を担当する小野山裕己さん(新配車事業部/部長)と、マーケティングを担当する原礼さん(GOアプリ事業本部/ 配車事業部)。CC INC. 共同創業者兼CEO/アートディレクター 戸田宏一郎さんをお招きし、dof でGOのプロジェクトを担当しているdof執行役員 / コミュニケーション・デザイナーの野崎愉宇と、プロデューサーの柴山絵里子・佐々木すぐるとともに、GOエコノミー誕生の知られざる舞台裏を語りました。どふぞご覧ください。

今回、攻めたくないですか?

ー聞き手
GOエコノミーは、どのような課題感から立ち上がったのでしょうか。

ー小野山さん
コロナが明けて以降、一部のエリア・時間帯でタクシーが不足しているケースが声として上がった時期がありました。それからタクシー会社様の多大なご尽力で需給の問題はかなり解消に向かったのですが、それでも朝のピークタイムに突発的な大雨が降ったり、電車が止まったりすると、すべての需要に対応しきるということは容易なことではありません。「相乗り」は、その解決策になり得るんじゃないか。そうした考えからサービスのスタートを決めました。

ー野崎
今まで世の中に文化として定着してなかった乗り方ですよね。多くの人が体験したことがないことだけにイメージするのが難しい。その壁をどう乗り越えるかをずいぶん一緒に議論しましたね。

ー小野山さん
はい、他人同士が相乗りするのは、日本ではこれまで「常識の外」だったサービスです。それをどう受け容れていただくかは、非常に難しい。ただ、そこを乗り越えて、移動したいと思ったときの当たり前の選択肢の一つにしていきたい。「バスもあります、タクシーもあります、エコノミーもあります」という社会を見据えて事業をスタートしました。

ー佐々木
dofとしては2020年から伴走させていただいている中で、原さんから見て、dofとCCのチームはどう映っていましたか。

ー原さん
一般的な「クリエイティブエージェンシーや広告代理店と、クライアント」という枠組みや関係性ではないな、と日々感じています。スタートアップは日々状況が変わりやすく、柔軟な対応が求められる側面がある。そのなかで、弊社の社内事情に至るまで真摯に向き合っていただいています。よくあるクリエイティブ開発のプロセスは、オリエンシートをしっかり書いて、それにマッチしたものを決めていくという流れが一般的かと思います。ただ今回は、これまでの様々なクリエイティブ開発の中でも弊社一同が感動するような形で、鮮やかに企画を描いてくださったのが印象的でした。さらに「オリエン通りだとこれ、でも向かわなきゃいけない未来で言うとこれ」という形で、これまでのブランドや協業の歴史を踏まえたご提案だったことにも大変感謝しています。弊社とdofさんの関係性だからこそできるものだと思いました。

ー戸田さん
クライアントさんのご意見を忠実に再現するのは、非常にやりやすいんです。でも、クライアントさんには見えていないものも、もしかしてあるかもしれない。外側から、その見えていないかもしれないところを僕は結構言うタイプで (笑) 。そのなかでも、そうした新しい視点を持ち込むディスカッションをしっかりさせていただけた。それがありがたかったです。

ー野崎
初回提案の時も、実は最初は割とこれまでのGOの世界観を踏襲した案への反応がよかったんですよね。だけど、GOさんからフィードバックを受ける中で、誰かがふと「いや、でも今回、攻めたくないですか?」と。あれが今回のクリエイティブに至った転機だったと思います。

ー小野山さん
そんな話もありましたね(笑) 。結果としてこういうクールで新しい仕上がりになって、自分たちが表現したい世界観はこういうことだったんだな、と感じました。

ー柴山
そう言っていただけるのは、とても嬉しいです。これまで一緒に積み重ねてきた関係性があるからこそだと感じています。

ー原さん
ミーティングでは、新入社員だろうと誰であろうと、GOのメンバーが発した何気ない発言も「確かに!」と受け取って、クリエイティブに活かしていただいた。その結果、お互いに納得感があるアウトプットを一緒につくりあげていけた実感がありました。

おトクだけじゃない。

スタイルとしての「エコノミー」

ー佐々木
マーケティングとして、最初に設定した課題を教えてください。

ー原さん
新業態の立ち上げの難易度が、今回は特に高かったと思います。GOアプリというブランド力がある一方で、それだけに甘えられない状況でもある。消費者調査を行いながら仮説をブラッシュアップして、ディスカッションしながらつくっていきました。

ー野崎
かなり初期に、GOのみなさんは「今までのGOブランドは財産になっているんだけど、今回のサービスはそこを飛び越える新しいチャレンジをしないとダメだと思う」とおっしゃっていた。あのみなさんの言葉が出発点になっている気がします。GOアプリが定着しているがゆえに、今まで通りでは「結局タクシーでしょ」と思われて新しい乗り方として認知されるハードルになる。かといって「安く乗れますよ」とだけ伝わると、”安かろう悪かろう”の印象になりかねない。そこは最初、ものすごくディスカッションしましたよね。

ー原さん
まさにそうで、私自身、価格のお得さをストレートに訴求軸にはしたくなかったんです。より良い乗車体験を提供できるにも関わらず、「所詮安いサービスなんでしょ」と思われてしまうリスクがある。でも、突き詰めていくとお得なのは事実だし、言わないわけにはいかない。その上で、どのようにブランドとして成立させるか、というところで特にdofさんを頼りにさせていただきました。便益は便益として存在するんだけれども、それをそのままは出しませんよ、と。そこがマーケとして、非常に意識したところです。

ー戸田さん
まず、ネーミングを決めるのが非常に難しかった記憶があります。GOさんが行きたい方向と「でもそれじゃわかりにくいよね」というクリエイティブ側の意見との、せめぎ合いの時期がありました。ユーザーからすると、一目で「これ、何をしてくれるの?」が伝わらないと難しい。「この乗り物は、私に新しい価値をちゃんと付与してくれるんだ」と思えるものにするには、名前と見た目でどうしたらいいだろうな、と。すごく試行錯誤しました。

ー野崎
議論の結果、ネーミングは『GOエコノミー』になりました。名前もラッピングもわかりやすく「おトク」を訴求する。でも「安いだけのエコノミー」ではなく、カジュアルで気軽に乗れる「スタイルとしてのエコノミー」という見え方にしていこう、と。それが結局、文化としてGOエコノミーを定着させることなんだということをお話しましたね。

継承と進化。

新サービスの「個性」のつくり方。

ー柴山
サービスのネーミングは『GOエコノミー』に着地しましたが、その後のCM制作やデザインの議論でも、『新しいことに挑戦しながらも、GOのアイデンティティからは外れないようにしよう』ということは、何度も話しましたよね。

ー佐々木
CMの方は、GOのTVCM、「どうする?GOする!」シリーズのフレーム力を活かしたアウトプットになりましたね。

ー原さん
複数案あったなかで、実は一番最初にご提案いただいたのが採用された案でした。GOの資産であるフレームは絶対に残しましょう、ただ新しさをきちんと表現したい、となりましたね。

ー小野山さん
GOの資産を使いながら、GOエコノミーのCMなんだと気づかせたい。でも、いつものCMで終わらないようにしたい。新しいタレントさんで新しい風がこんなに吹くんだな、というのは、私にとっても勉強になりました。

ー柴山
一方、デザインについては、新サービスらしい新しいカラーリングに挑戦しました。

ー戸田さん
GOのロゴは地球をモチーフにしていて、一度モザイク状にカラーを置き直してそれぞれの色の種類を細かく指定してつくりあげているブランドカラーなんです。今回の車体ラッピングに使っている色もGOのブランドカラーの一部を使っているので、GOブランドとは思想が接続しているものなんです。そのうえで、GOのタクシーとも、今ある世の中の公共交通とも違うもの。通常のGOの車両ラッピングがこれだけ市民権を得ているからこそ、GOエコノミーは「見え方が違うもの」にしたい。そういう考え方から、この「派手に見える」かたちに落ち着いていきました。

ー小野山さん
いまとなってはこの色のイメージが強いですが、どの濃さでいくのか、何パターンも見せていただいた記憶があります。

ー戸田さん
前方のブルーの色味を増やしたり、彩度を調整したり。色々と検証して試し貼りもしましたね。GOの皆さんがすっと受け入れてくれたのは、よかったです。

ー野崎
その「派手に」というのは、小野山さんも最初のブリーフでおっしゃっていました。なぜ、目立たせたかったんですか。

ー小野山さん
GOエコノミーはいままでの移動の選択肢に対してすごく新しいものじゃないですか。それを文化として浸透させていかなきゃいけない。難しいし、時間もかかるだろうという覚悟は、立ち上げの段階からしていました。私なりにずっと思っていたのは、「いかに知ってもらうか」、「体験してもらうか」、そして「体験したあとに、また使いたいと思ってもらうか」。この3つです。その最初の「知ってもらう」ということを達成するためには、「目立たせることだ」と思っていました。

ー佐々木
今回のGOエコノミーのキャンペーンでは、東京都内の多くのOOH媒体(※)へ広告を掲出しました。
※OOH:駅看板などの交通広告

ー原さん
そもそもGOエコノミーは運行エリアが狭いので、確実にサービスが貢献できる、需要が高そうなエリアを見定め、需要喚起を最大化していくことが重要です。今回は特に湾岸エリアを中心に、利用シーンに近いOOH掲出先を丁寧に選定し、ユーザーの反応をみながら、GOエコノミーならではのオフライン接点のナレッジを貯めていきました。その上で、26年春に渋谷や六本木などでの大々的なOOH展開を行うために、新たなクリエイティブの方向性を見出す必要がありました。

ー佐々木
OOHのクリエイティブの方向性についてもGOのみなさんとクリエイティブチームで議論を重ねましたね。

ー戸田さん
最初に大きな方向性を三方向お持ちしたときの、GOの皆さんの反応が結構面白くて。「このサービスの未来に、こういうことが必要か、必要じゃないか」という判断軸で選ばれていたんです。GOエコノミーブランドを背負う上白石萌音さんがまるでペットといるような距離感でGOエコノミーに触れているような方向性の案が選ばれたときに、「GOさんが行きたい未来って、こういう未来なんだな」と実感しました。

ー佐々木
グラフィックの撮影現場では「リンゴ」の話も話題になりました(笑) 。とある事情で、撮影の美術の考え方を撮影前日に考え直す必要性が出てきた。それで戸田さんのアイデアで、上白石萌音さんにリンゴを持ってもらうことになって。正直、撮影の時にはみんな、これでうまくいくのか?と不安だったんですが、初めてプレビューを見せてもらったときには「リンゴだ!リンゴしかない!」と。皆さんの感動がすごかったですよね。

ー原さん
最初は「リンゴ?」とさすがに厳しいんじゃないかと思いました。でもプレビューを見たときは、クリエイティブの潜在的なパワーを体験できた撮影だったなと思います。

ー佐々木
戸田さん、ズバリなぜリンゴだったんですか。

ー戸田さん
普通にGOエコノミーの車体があって、彼女がいて、というだけだと、1ミリも「あそび」がない。動きがないから、あとはポーズを決めていくしかなくなる。必要なものだけで構成すると、どうしても動きがなくなる。そこで「間をつくる」みたいな形で、あえて崩していくプラスアルファも、あった方がいいと考えて、色んなリンゴを買ってきてもらいました。ぶっちゃけて言うと、別にリンゴじゃなくてもいいわけですよ。いや、でも前日にリンゴを揃えてもらうのも大変だったと思います。現場のスタッフの皆さんに感謝です。

空気のような、インフラに。

GOエコノミーの描く未来。

ー野崎
GOエコノミーは、これからどうなっていくとお考えですか?

ー小野山さん
課題ももちろんあります。すごく暑いとか雨だとか、歩きや自転車だときついなというタイミングでは選択肢になってきている。でも、普段の移動で選ばれるにはまだもうちょっと時間がかかるなというのが正直なところです。

ー柴山
たとえば「病院に行く日は、GOエコノミーに乗ろう」と自然に思い浮かぶようになるとか。

ー小野山さん
そうです。今日は暑いなとか寒いなとか、移動きついな、と思った時にGOアプリを開いて「GOエコノミーがあるじゃん」となっていけたら。選ばれるのが当たり前の状態をつくっていけたらと考えています。

ー佐々木
野望や夢として、どのようなことを思い描いていらっしゃるのでしょうか。

ー小野山さん
タクシー、バス、に加えて「GO エコノミー」。新しい移動の選択肢の一つとして当たり前になる状態を目指します。さらに、これから恐らく自動運転が世の中の主流になっていくなかでも、自動運転×相乗りが一般的になる未来を目指したい。
地方に行くと、移動がしづらいという課題が顕著なんです。例えばバスが1日に2、3本しかなく、でもそれを維持するためのコストもかかり、実際に自治体様からご相談をいただきます。バスは根幹の交通手段ですごく大事ですし、今も必死に保ってらっしゃる方々がいる。たとえばそれをフォローするような形にGOエコノミーがなれる。そんな未来はいいですよね。「80歳になる田舎の両親が、今なお車を手放せません」こういった話って日本中で起こっていると思うんです。そのような課題にもGOエコノミーが解決策になる。これが野望です。

ー野崎
それはとても素敵な世界ですね。戸田さんは、今後こうなっていくといいな、というのはありますか。

ー戸田さん
ローカルの人々のインフラになっていくということを考えると、個人的には、そんなに派手な存在じゃなくなっていってもいいんじゃないかなとも思います。「空気」みたいになったらいいんじゃないかと。最初はポップに強い形で展開しつつ、いずれ当たり前の移動手段になってフェーズが変わる時には、デザインも変えていってもいいかもしれないですよね。

ー柴山
最初は気づいてもらう存在として、そこから少しずつ、当たり前の移動手段になっていけたら、ということですよね。

ー戸田さん
そう。ビジュアルをつくっていく身としては少し寂しいところもありますが、本当はインフラって、空気のように、気づいたらあるみたいな感じになるのがいいよね。

ー原さん
自治体との連携だったり、ローカルインフラとしての、日常の移動のお手伝いだったり。一つ一つは小さくても、時間とともに積み重なって、全国的に認識が変わっていく。そのときに、またコミュニケーションチェンジがありそうですね。

ー野崎
今やGOのロゴをあしらったタクシーが当たり前のように走っていて、インフラとして空気になっている。同じように、「GOエコノミーだったら、こういう当たり前」というスタイルを作っていきたいですね。

ー佐々木
新しい交通手段として大きく始めて、いつかインフラとして空気になる。その道のりこそが「文化をつくる」ことなのかもしれません。本日は、ありがとうございました。

ここまで読んでいただき、どふもありがどふございました。
今後のdof talkにもご期待ください!


<写真・構成 宇佐見 彰太(dof)>