新商品「ZENTO」が導いた未来
uniとdofが描く、“書く”ことの再定義
新商品「ZENTO」が導いた未来
uniとdofが描く、“書く”ことの再定義

2025年2月3日、三菱鉛筆株式会社が新たに発表した水性ボールペン『uniball ZENTO(ユニボール ゼント)』が、国内にて順次展開をスタートしました。北米市場でのローンチを経て登場したこのプロダクトは、「すいすい書ける」という筆記体験にこだわり、現代のストレス社会において“自分と向き合う時間”を生み出すことを目指した、新感覚の水性ボールペンです。
今回のdof talkでは、三菱鉛筆株式会社から開発チームの関口隆二さん、高嶋依香さん、古場涼太さん、板津祐太さん、コンセプト開発からネーミングなどのブランド開発を支援したdof執行役員/ブランディング・ディレクターの工藤拓真(以下、工藤)、dofビジネス・プロデューサーの石井岳(以下、石井)が登場。新プロダクトの誕生秘話から、北米市場への戦略、ネーミングに込めた思想、そしてZENTOが描く「これからの表現文化」まで語り合いました。どふぞご覧ください。
2025年2月3日、三菱鉛筆株式会社が新たに発表した水性ボールペン『uniball ZENTO(ユニボール ゼント)』が、国内にて順次展開をスタートしました。北米市場でのローンチを経て登場したこのプロダクトは、「すいすい書ける」という筆記体験にこだわり、現代のストレス社会において“自分と向き合う時間”を生み出すことを目指した、新感覚の水性ボールペンです。
今回のdof talkでは、三菱鉛筆株式会社から開発チームの関口隆二さん、高嶋依香さん、古場涼太さん、板津祐太さん、コンセプト開発からネーミングなどのブランド開発を支援したdof執行役員/ブランディング・ディレクターの工藤拓真(以下、工藤)、dofビジネス・プロデューサーの石井岳(以下、石井)が登場。新プロダクトの誕生秘話から、北米市場への戦略、ネーミングに込めた思想、そしてZENTOが描く「これからの表現文化」まで語り合いました。どふぞご覧ください。

ー関口さん
ZENTOの開発は、私たち技術部門が長年続けてきた「アイデア会」という取り組みから始まりました。これは、会社から与えられたテーマだけでなく、技術者自身が「本当に作りたい」と思うものに取り組むことができる場です。年間の業務時間のうち、約10〜15%を自由に使ってよい制度があり、それがアイデアの芽を育てています。実際に今回のインク技術も、その自由研究的な活動から生まれたものでした。
ー石井
自由に時間を使って研究開発できるって、すごいカルチャーですね。どんな社員にもアイデアを形にするチャンスがあると。
ー関口さん
そうなんです。もちろん、自由にやって良いと言っても、それを商品化するにはクリアすべきステップがあります。でも最初の段階では、熱量がある人の想いを尊重して、それを応援する文化があります。そういう意味で、このZENTOの原点も、組織ではなく個人からの情熱でスタートしました。

ー高嶋さん
私も初期の段階でこのインクに触れたとき、率直に「これはすごい!」と感じました。ゲルインクを長く使ってきた自分にとって、まったく新しい感覚でした。実際、リフィル開発は2019年頃から始まっていて、社内でも「これは何か違う」と話題になっていましたね。
ー古場さん
最初は“ゼロ”というコードネームで呼んでいました。「ゼロから始める」「まったく新しいものを生み出す」という意味を込めた象徴的なネーミングです。
ー石井
なるほど、「ゼロ」は表現をゼロから再定義していく、そんな大義を背負ったプロダクトだったのですね。最初お話を聞いたとき、表現革新カンパニーとしてグローバルで戦う上で、意義深く責任のある新商品だと皆様から伝わってきた事を覚えてます。

ー関口さん
2020年、コロナが本格的に世界を覆い始めた頃、会社から「この先の社会がどう変わるかを考えなさい」というお題が出されたんです。私は自宅のウォークインクローゼットにこもって、本気で考えました(笑)。在宅勤務が一気に浸透し、「家=仕事場」という考え方が急速に広がる中、文具のあり方も大きく変わると直感したんです。
ー石井
その頃から、私たちもuniの皆さんと「未来ってどうなっていくんだろう」という議論を何度も重ねてきましたね。単に短期的な施策を考えるのではなく、10年後、20年後を見据えて思考する姿勢に、いつも感銘を受けていました。
ー関口さん
ありがとうございます。我々は常に「未来の当たり前を作る」という視点を持つようにしています。今ある市場の形に迎合するだけでなく、むしろ市場を変えるくらいのつもりで考えないと、新しい製品は生まれませんからね。

ー古場さん
とはいえ、社内全体で未来ビジョンを共有するのは簡単ではありません。今ある市場には黒軸ペンがずらりと並んでいる。そんな中で新たな付加価値や感情を提案するZENTOのような存在が必要だと伝えるには、粘り強いコミュニケーションと根気が求められました。
ー石井
それでも皆さんは、我々のような外部の立場の人間にも対等に耳を傾けてくれて、組織の内と外を越えて、共に未来を見据えて思考する。そんなuniの姿勢に、私たちも多くを学ばせていただきました。

ー関口さん
ZENTOを開発するにあたって、最初から「グローバルで売れる商品を作る」という意志が明確にありました。特に、当社の強みである水性ボールペンは、アメリカやヨーロッパ、中東、インドなどで受け入れられてきました。日本ではあまり馴染みがない水性ですが、世界では長く使われているんです。
ー石井
なるほど。そういう背景があるからこそ、「まずアメリカで売る」という決断に繋がったわけですね。
ー関口さん
そうなんです。ちょうど2020年、アメリカでのビジネスモデルを代理店制から自社販売会社制へと転換したタイミングでした。新しい体制のスタートに合わせて、新たなフラッグシップ商品が求められていたんです。その意味で、ZENTOはまさに「新しい時代の象徴」として投入されました。

ー古場さん
ただ、アメリカ市場は一筋縄ではいきません。一般的には黒一色の軸で10本パックのような売り方が主流で、効率性が重視されています。でもZENTOは、それとは異なる価値観を提案する製品です。カラー軸や少量パッケージ、個性あるラインナップに挑戦しました。
ー高嶋さん
「書くこと」は、自分の内面を言語化し、気持ちを整理し、時には癒す行為です。ペンがただの道具ではなく、“感情に寄り添う存在”であってもいい。そう信じたからこそ、ZENTOではあえて「機能性一辺倒ではないアプローチ」を選んだんです。
ー石井
それは「新しい表現体験」を提供する、という大きなチャレンジですね。ペンというカテゴリーの中で、感性や文化と向き合う挑戦をされていたことに、我々もとても刺激を受けました。

ー板津さん
ペンって、単に文字を書くための道具じゃないと思うんです。自分の思考を整理したり、感情を外に出す手段だったり。もっとエモーショナルな存在になりうると感じています。だからこそ、自分の気分や好みに合った一本を選びたくなるんですよね。
ー石井岳
まさに「筆記具の再定義」ですね。「書くこと」自体が自分と向き合う時間になっている、という感覚は共感します。
ー関口さん
ZENTOの構想が深まった2020年は、コロナ禍によって人々の生活環境が大きく変わりました。多くの人が自宅で仕事をするようになり、オフィスのような効率性を重視した空間ではなく、自分の好きなものに囲まれた場所で“書く”ことの意味を再発見する流れが生まれてきたと感じています。

ー古場さん
私たちがアメリカの量販店や雑貨店を見て回ったとき、ろうそくや食器といった商品が、すごく豊かな色彩や香り、感情的価値を伴って並んでいたのが印象的でした。筆記具以外のカテゴリではすでに「情緒性」が重視されていたんです。なのにペンだけは機能一辺倒のまま。それはおかしいと思いました。
ー高嶋さん
私自身も、「この色が好きだからこのペンを使いたい」「この書き心地が今の気分に合う」といった、自分の感情や思考に寄り添ってくれるようなプロダクトが欲しかった。ZENTOは、そうした時間や気持ちを大切にするための存在でありたいと思っています。

ー石井
ネーミングの開発段階では、「アメリカで勝つための名前を」という命題がありましたよね。その中で「禅」という概念が浮上しました。
ー工藤
「禅」という言葉は、日本的な精神性や静けさ、余白を象徴しつつ、海外でもすでに馴染みのある言葉として受け入れられていました。そこから派生して生まれた造語が“ZENTO”です。ZENにTO(到達、方向性)を加えた響きには、「今ここから未来へ」というニュアンスも込められています。

ー高嶋さん
dofさんから「それって禅のことですか?」と聞かれたとき、自分たちの中にあった感覚がスッと形になったようで、すごく納得感がありました。書くことを通して得られる心の整い、深い呼吸のような時間――そういうものを表すにはぴったりの言葉でした。
ー関口さん
加えて、英語圏の方にも自然と響くような音であることも大事なポイントでした。だからこそ、現地チームと連携して、文化的にも言語的にも無理のない形に仕上げることができました。これは日本側だけでは絶対にできなかったことです。そんな意味と語感を共存させたネーミングを提案いただけた。大感謝です。

ー関口さん
ZENTOはまだ、ようやくスタートラインに立ったばかりのプロダクト。これから10年、20年というスパンで、本当にグローバルなスタンダードになっていくことを目指しています。
ー高嶋さん
私は、「ZENTO」という言葉から、単に「ペン」ではなく、書く時間やそのときの気持ち、自分と向き合う静かなひとときを連想してもらえるような、そんなブランドに育っていってくれたらと思っています。
ー板津さん
ZENTOがきっかけで、日常の中でふと「なんかいいな」と思える瞬間が生まれたらうれしいですね。そのひとつひとつの積み重ねが、ブランドの価値になっていくと信じています。
ー古場さん
これからは、お客様と一緒にZENTOの「らしさ」を育てていくフェーズに入っていくと思います。お客様がどんなところに価値を感じ、逆にどこに不満を抱くのか。そうした声に真摯に耳を傾けながら、ZENTOを進化させていく。そうでなければ、せっかく芽吹いたブランドの可能性が閉じてしまうと思うんです。浮かれることなく、一歩一歩、歩んでいきたいと思っています。


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