COLUMN

畑間 晶太

Shota Hatama

【チャイナトリップ】上海2018年レポート。

Chinatrip@ShangHai

畑間です。7月にコンサルやUX設計をしているbeBit(以後:ビービット)さんのチャイナトリップに参加しに、最近デジタル化で注目されている上海に7年ぶりに行って来ました。7年前は、海外展開作業で現地のグループインタビューに参加するためでした。中国人の口調、服装、マナー、時間のルーズさから接客や町並みなど、全体的に中国に対して良くない印象をうけました。その印象を、今回のチャイナトリップで180度覆されたのは言うまでもありません。店員の挨拶、愛想、振る舞い。タクシー運転手の対応、交通インフラの充実、そして、車のクラクションが全くしない市内。自分が知っている上海はもはや存在しておりませんでした。
 
いまの中国は「キャッシュレス社会」と言われていますが、具体的にそれがどういったことなのか。デジタル化が進むとどうなるのか。ビービットさんのチャイナトリップから学んだ今の上海について、備忘録的にまとめておきたいと思います。

ひとこと、今の上海はスゴイ!

上海到着後、すぐに目の当たりにする上海のデジタル化。日常にとてもしっかり定着しているのがわかります。とくに、モバイルペイメントにおいては、ありとあらゆる所に浸透しており、財布いらずの状況になっていました。キャッシュを持っている(わざわざ換金したのに、、)こちらがなぜか不安になってしまう。それくらいの雰囲気が漂っていました。

数字で見る今の中国

空港からビービットさんの上海オフィスにむかい、ランチ後すぐに座学が始まります。ここでは、数字で今の中国について学び、キャッシュレス経済中国の構造について理解を深めていきます。
 
数字については、簡単に下記にまとめます。
 
・インターネットユーザー:7億3千万人
・モバイルユーザー:うち95%の6億9千万人
・都市部のスマホ普及率:97%〜99%
※日本:64%、韓国:92% 、アメリカ:78%
・モバイル決済プラットフォーム利用率:98.3%
※日本の店頭でのモバイル決済率は6%

国内産業の育成が生んだ巨大デジタルサービス

中国3大インターネット企業BATと呼ばれる、バイドゥ、アリババ、テンセント。上の数字をみてわかるように数字の桁が我々日本人からするとぶっとんでいるようにかんじます。アリババの2018年現在の時価総額は世界6位(約54.9兆円)に、テンセントは8位(54.4兆円)に。とにかく昨今の中国企業は驚くべき成長を遂げております。
 
中国にはGreat Firewall(https://cybersecurity-jp.com/security-measures/6729)という他国との情報規制があります。この時代にそんな規制して何やってるのか、とても理解し難かったのですが、結果として、国内の産業政策を成長させているのです。そして、BAIDU、Alibaba、テンセント、が生まれ、今では世界の時価総額トップ10に二社が入っている。全ては国策「国内産業の育成」から生まれているわけです。政治インパクトを感じずにいられません。

O2OからOMOへ

今の中国のモバイルペイメント市場は、アリババ社が2013年に『国中の事業者へのAlipay POS端末無料無制限配布』したのがきっかけのようです。国策と思いきや、一企業のマーケティング戦略から生まれているとは驚きしかありません。本当にスゴいです。そして、テンセントのWeChatPayが追従し、いまとなってはこの2社が中国のモバイルペイメント市場の2大プラットフォーマーになり、世界時価総額ランキングトップ10に入ったわけです。13億人、万歳です。
 
モバイルペイメントが浸透した結果、今の中国は、人々の活動が個人と紐づいたデータとして収集され、購入データだけではなく行動全般のデータが利用可能になっているそうです。そして、オフラインとオンラインの消費行動に垣根がもはやなく、むしろオンラインがオフラインを覆っているイメージになっている。そのビジネスモデルのことをOMOといわれております。

ビービットさんが、OMO先進企業のBitAuto社(テンセントやバイドゥーが出資をする大手自動車情報サービス)にお話をきいたところ、「O2Oという概念はもう古い。オンラインがオフラインを侵食しマージするOMOが今起きていることであり、分ける意味はない。これからのパワーゲームにおいて、高頻度、少額取引でタッチポイントを多く確保し、そのデータによってプロダクトとUXの改善スピードを速めるれるかどうかが鍵である。」そんなお話があったそうですが、まちがいなく、このOMOビジネスモデルが、いまの中国の経済成長の理由の一つになっているにちがいありません。

ウォークイン型EC倉庫 盒馬鮮生(フーマー)

座学では学べない現場視察。これもビービットさんのチャイナトリップの見どころでした。座学の後に、アリババグループの食品スーパー盒馬鮮生(フーマー)に行ってきました。「30分宅配」「店舗の倉庫型」
など、よく話にはきいていたスーパーです。実際行ってみると、まぁそれは色々驚かされました。
目の前に広がる巨大水槽から、棚に商品を陳列するスタッフではなく棚から商品をピックアップしているスタッフ。有機野菜ブースに並ぶ野菜はすべてトレーサビリティ(誰がつくったか、いつどうやってつくられたか、などの情報開示)だったり、お店の裏で待機している配送スタッフ。すべてはオンラインとオフラインのお客さまの体験価値を良くするため。
 
アマゾンの倉庫はロボットがすべての作業を対応しているといいますが、このフーマーは一見スーパーっぽいですが、そもそも発想が「見せる倉庫」なわけです。モバイルペイメントが浸透した結果、こういったことまで実現できちゃうわけですが、注目したいのは、アリババがどういった体験価値を自分たちのプラットフォーム上で設計しているか。お客さまとの接点をどこで持つか。ということだったりするそうです。
 
アリババは、シェアバイク「ofo」に出資し傘下にすることで、シェアバイクという体験をアリババのプラットフォーム上で展開した。またele.meにというフード配達サービス、Didiという配車サービスも同様に傘下にすることで、さまざまな体験価値を自分たちのプラットフォーム上でお客さまに提供することができていたりします。そして、それぞれのデータによってサービスとUXの改善スピードを速めてそれぞれの体験価値を向上しているそうなんです。人は「商品」に興味がなく、その「商品のストーリ」に興味があるなどいいますが、ここではさらにその先、「商品の体験価値」に興味がある気がしました。消費者のライフスタイルに寄り添いサービス展開するってこういうことなんですね。

まとめ

今回のチャイナトリップは、とにかく学びが多く、刺激が多く、素晴らしい体験をすることができました。この手のニュースを耳にするだけだと自分ごと化はなかなかできませんが、目の前にすると色々考えることが多くあります。現地にいっていないと、「中国の話でしょ。環境が異なるから、日本ではない話だよ。」なんて思う自分もいたかと思います。ただ、こういう世の中をみて、自分の環境を見直し、日本を見つめ直し、それらについて思考量を増やす。そして、誰かと共有し議論する。それが大切な気がしております。本当に行くことができてよかった。最後に、急遽チャイナトリッププログラムに参加させて頂いたにも関わらず、暖かく迎えいれてくれたビービットの中島さんと藤井さんには深謝です。ありがとうございました。

beBit(ビービット)(http://www.bebit.co.jp/